自治体における年次財務報告について

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自治体における年次財務報告についての研究レポート

アメリカ地方政府の財務報告を参考に

 近年,地方自治体の財政悪化を背景として,その現状を住民に認識させるため,自治体が企業会計方式の導入を謳い,バランスシートなどの財務諸表を公表するようになってきたことは,周知のとおりである。
 バランスシートの作成に続いて,企業の損益計算書に相当する行政コスト計算書が導入され,自治体によって公表される財務情報は急速に充実してきたかにみえる。一方で2003 年3 月には「公会計概念フレームワーク」が公表され,自治体を含む公共部門の財務報告に係る理論的基盤が整備されつつある。
 このようなわが国の動きに先駆け,アメリカでは,すでに州および地方政府の会計に関する概念書が第3 号まで,そして基準書が第42 号まで公表されている。これらの概念書や基準書が,わが国の地方自治体会計を理論的に考察していくうえで,重要な手がかりとなることはいうまでもないであろう。                                  (経営戦略研究 vol.3 酒井 大策)

地方自治体における年次財務報告の研究.doc  

公会計における財務報告の目的とその問題点

 先の報告は,日米比較という手法をとりながら,わが国の公会計における財務報告の目的とその問題点を顕在化するもので、近年の公会計制度改革は,企業会計方式の導入として特徴づけることができるであろうが,自治体を含む「譲渡可能な残余利益請求権を有しない組織と営利企業の会計方法の違いは,前者には欠陥があり後者と同じにするよう代えるべきとする明らかな根拠を形成しない」


 したがって,企業会計方式の単純な移植が公会計制度の改善につながるとは限らないことは容易に理解されるであろう。

 近年の企業会計をとりまく議論においては,会計の役割として,情報利用者の意思決定に有用な情報を提供すること(意思決定支援機能)が重視される傾向にある。

 しかしながら自治体をとりまく諸条件を考えるとき,会計情報の役割として,まずもって説明責任の履行が期待されているといえるのである。

 現在,我が国政府が置かれている財政状況は,危機的な水準に達しており,その結果,異時点間にわたる世代間の負担の公平が損なわれている。しかし,そのような状況にも関わらず,政府の財政運営における規律は一向に改善されず,今なお,公債残高の累増が続いている。このような政府の意思決定の積み重ねは,最終的には,国民,特に自らの利益を主張する手段を何ら持たない将来世代の利益を著しく損なうものである。

 主たる問題意識は,我が国政府が,国民(≒納税者,有権者)から納税等を通じて受託した経済資源を如何にして効率的に運用すべきか,また,政府の国家経営における意思決定について,これを如何にして財政運営の面から適正化し,規律付けるか,といった点にある

 ただし,日米の納税者としての意識の格差を考えるとき,説明責任を重視するだけでは行政の規律づけには不十分であり,財務情報を用いたインセンティブ・システムの設計が重要な鍵を握っていると考えられるのである。
             (滋賀大学 山田康裕 論文より)

 

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このページは、blogskawano.netが2010年2月14日 12:11に書いたブログ記事です。

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