漱石 三四郎 梗概

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朝日新聞掲載 三四郎 梗概





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「三四郎」読書メモ

 

 明治41年(1908年)9月から4ヶ月間、117回にわたり、朝日新聞に連載された。「それから」「門」へと続く。いわゆる漱石前期3部作の第Ⅰ作目となる中編小説。

 小川三四郎は、故郷熊本に母を残して上京、帝国大学文科大学に入学した。発展する東京の風俗に驚きながら、友人の佐々木、同郷の先輩の野々宮、「偉大なる暗闇」である広田先生などと交流を結び世界を広げていく。そして彼は、自分の周囲に三つの世界――母といる故郷の熊本、広田先生らの学問の世界、そして華美あふれう世界があることに気づく。

「燦として春の如く盪いている」第三の世界の象徴が、美しく奔放な女性・里見美禰子だった。三四郎は美禰子に惹かれていくが、彼女は「迷える子羊(ストレイシープ)」という謎の言葉を彼に投げかけて去っていく。

 地方出身の学生の青春を追ったこの作品は」、東京で生きる若者たちの人間像を描写するだけでなく、日本の青春記と近代化の過程を描いた名作である。

 

 

 この作品は、島崎藤村の「春」の後を受けて、明治41年9月から年末まで「朝日新聞」に連載された。漱石の作品の流れからみると、過度的な性格をもった作品といえる。「草枕」や「虞美人草」のような美文調はようやく姿を消して平坦なものになっており、「吾輩は猫である」にみられるような機知や軽口が散見されるものの「それから」のような内面的な心理描写にまでは及んでいない。

 青春を描いた文学としては、当時から多くの読者に愛されてきたが、当時のいくつかの社会的傾向を、登場人物を通じて描く新しい小説の方法も注目される。たとえば、身辺に起きた森田草平の「煤煙」事件の相手であった平塚らいてうについての話が一つの姿になってまとまったものが、美禰子だったのではないかという説もある。美禰子は、三四郎にとっては一種不可解な、いつも上のレベルにいる人物として描かれているのも、そのためである。三四郎と美禰子の関係は、恋愛であって結局恋愛ではなく、永遠に別れてしまうことによって恋愛ドラマとしては成立しない。

 

「作品」ながれ

東京の大学に入学するため、上京する三四郎

上京車中での男との出会い、近代への危機感、三四郎の不安

相席となった女との一泊、「あなたはよっぽど度胸のない方」といわれ、三四郎23年の弱点が露見してしまう。

男との再会(広田先生と判明)

熊本の安定した意識――>上京により今までの自分が卑怯であったことの自覚

――>動揺の世界へ――>不安――>孤独

野々宮さんを尋ねる――>留守番――>若い女の鉄道自殺の目撃

三四郎、自分の世界を整理

    母を象徴する故郷、今までの世界

    広田先生、野々宮さん等の批評家の世界

    深厚な世界

 

作品の人間関係

  三四郎

  三四郎の友人、佐々木与次郎

  与次郎恩師の広田先生

  近代的な女、里見美禰子

  野々宮宗八さんの妹、よし子は、母子的な性格

 

美禰子と三四郎

三四郎池での出会い

 広田先生の家で

 菊人形展から小川沿いの散策 統一のない、ストレーシープ

 与次郎の借金

 美禰子への接近

チャーチでの別れ

 

三四郎

 熊本の高等学校を卒業した小川三四郎は東京帝国大学に入学し、それまでとは違う都会の生活に日々、驚きを覚える。上京途中の車中で会い、後で再会することになる第一高等学校の英語教師・広田や、その広田を大学教師に昇進させようと運動を画策する専科生の佐々木与次郎、さらには郷里の先輩で理学者の野々宮宗八らと交流する中で、そんなある日、彼は大学構内の池の端で里見美彌子という謎めいた女性と会い、恋に落ちる。やがて広田先生を「偉大なる暗闇」と賞賛する与次郎の運動に巻き込まれる中、三四郎は美彌子との恋心をつのらせていく。大学を舞台にした人間模様を通じ、青春の甘美さと苦悩があざやかに描かれる青春小説。

 

 

三四郎 一より

「三四郎」は、新聞社に入り、職業作家として広く読まれる小説を」書かねばならぬ」立場に立った漱石が、一般の人気を得ることのできた最初の作品である。地方出身の帝大生の眼に映る東京風俗への興味、それも人気の一因だったろうが、やはり青年三四郎の、世慣れぬ素朴な可愛らしさが大きな魅力だ。これは冒頭間もなく、熊本を出て東京へ向かう三四郎の、世間ずれしない魅力が可笑しく描かれた一場面。

 

 

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このページは、blogskawano.netが2017年5月 3日 07:04に書いたブログ記事です。

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