2018年9月アーカイブ

日銀日記 五年間のデフレとの闘い

著者  岩田規久男 (著)筑摩書房    発売予定日 2018年10月26日
日本経済をここまでダメにしたのは誰か? デフレから脱却し、経済成長を達成するべく、日銀副総裁を務めた経済学者による5年間の記録。歴史的転換点に立ち会え。【商品解説】
発売前なので、ネットからの情報です。
デフレを伴った長期停滞に陥った日本経済において、日本銀行の金融政策を批判し続けてきた岩田氏が副総裁の立場で苦闘した様が、多様な人々との関わりと共に活写されている。安倍政権の経済政策(アベノミクス)や、アベノミクスの第一の矢として位置づけられた「大胆な金融政策」がどのような形で行われたのかという点については既に政策担当者への取材を通じまとめられた類書もある。だが、やはり金融政策の理論的支柱であった岩田氏の目線からの回顧は貴重であり、その金融政策への是非はともかくとして一読に値する本である。印象に残った点を三点。

 まず、時々に記された日記という本書の体裁が、読者に活き活きとした臨場感を与えるという点である。特に、2013年4月の「異次元の金融緩和策」、2014年4月の消費税率引き上げ、2014年10月の追加緩和、その後の原油安や世界経済の変調、2016年2月のマイナス金利政策の導入、2016年9月の総括検証と「長短金利操作付き量的質的金融緩和」への移行、といった出来事を巡って、岩田氏が何をどう考え、政策決定がいかになされたのか、昭和恐慌研究会を含む「岩田ゼミ」の面々がどう関わったのかという点が活写されており、やはり事実は小説よりも面白く興味深いと感じる。政策形成過程をより深く知るという意味では、日銀執行部に属する岩田氏と企画局との関係の解明や政策決定会合の議事録の公表を待つ必要があるが、(その点を考慮に入れてもおそらく)必要十分だと感じる内容である。

 次は、金融政策をつかさどる中央銀行副総裁としての岩田氏と政治家との関わりである。大学教授時代から論客としてならした岩田氏からすれば、反論は許されず、理不尽な扱いに黙って耐えるという国会質問は耐え難いものであったのだろう。経済政策を巡る議論は、まず事実を事実としてきちんと認識することが必要だ。この点、国会質問に関する日記は、金融政策に関する俗説への批判集としても読むことができ、興味深い。

 「異次元の金融緩和策」は当初は大きな成果を挙げ、日本経済は「2%の物価安定目標」の到達まであと一歩の所まで到達した。しかし、デフレからの完全脱却途上に行われた8%への消費税率引き上げは、「リフレ・レジーム」を毀損させ、物価に関しては目標からは未だ程遠いのが現状である。海外経済の不確実性が増す中で19年10月には再び消費税率引き上げが予定されているが、本当に影響は軽微といえるのか。デフレからの完全脱却は可能なのか、疑問である。岩田氏はデフレ完全脱却のために、財政政策、社会保障政策、及び成長戦略が需要を喚起する「リフレ・レジーム」になっておらず、「リフレ・レジームの再構築」が不可欠であると説く。本書を読むと「リフレ・レジームの再構築」は政府・日銀を含めた多様な政策担当者の連携が不可欠であると感じる。
岩田規久男
いわた きくお
経済学者
岩田 規久男は、日本の経済学者。上智大学・学習院大学名誉教授。専門は、金融論・都市経済学。小宮隆太郎の弟子。リフレ派経済学者の第一人者として知られており、学習院大学教授時代、積極緩和派の急先鋒として鋭い弁舌で知られていた。また日本銀行に批判的な論客として知られていた。 ウィキペディア
生年月日: 1942年10月3日 (年齢 75歳)

日銀日記


以前著作

リフレが日本経済を復活させる 

リフレが日本経済を復活させる 経済を動かす貨幣の力
岩田規久男、浜田宏一 、原田泰著  中央経済社  2013年3月
デフレは貨幣現象であり、そうであるからこそ、デフレ脱却には金融政策が不可欠である。なぜデフレは貨幣現象なのか、なぜ金融政策によってデフレから脱却できるのか、なぜその過程で生産と雇用が増大するのかを、論駁の余地のないように明らかにする。




 デフレ脱却に向けた金融政策のレジーム転換

デフレと戦う――金融政策の有効性 レジーム転換の実証分析新刊

著者 安達誠司 (編著),飯田泰之 (編著)

「黒田日銀」6年間の成果とは? 金融政策のメカニズムと効果について実証的に分析したはじめての書。

 非伝統的金融政策の実体経済に対する影響について、様々な理論的仮設、様々なチャンネルについて計量的な検証を進めることで、平成大停滞の金融政策の影響力について整理された分析が行われている。

 本書から得られた諸結論が、今後の政策論争をより実りのあるものへとすることを期待するものである。

内容紹介

「黒田日銀」6年間の成果とは? 金融政策のメカニズムと効果について実証的に分析したはじめての書。

目次

第1章 量的・質的金融緩和、予想インフレ率、生産

第2章 マネーと物価

第3章 金融政策によるフィリップス曲線のシフト

第4章 フィナンシャル・アクセラレーターと金融政策の効果

第5章 ソロスチャートの実証分析

第6章 為替レートと企業業績--企業レベルのパネルデータによる分析

第7章 金融政策と財政政策の相互関係をめぐって

第8章 物価水準の財政理論(Fiscal Theory of Price Level,FTPL)について

第9章 予想インフレ率の予測力


「黒田日銀」約6年の成果とは? 前例なき金融政策のメカニズムと効果について、実証・理論の両面から分析したはじめての書。エコノミスト、経済学者らが多面的に論じる。

【執筆者一覧】(掲載順)
原田泰 日本銀行政策委員会審議委員
石橋英宣 内閣府大臣官房総務課企画官
矢野浩一 駒澤大学経済学部教授
岡田多恵 駒澤大学経済学部専任講師
堀 雅博 一橋大学国際・公共政策大学院教授
梅田政徳 消費者庁消費者教育・地方協力課課長補佐
花垣貴司 在中華人民共和国日本国大使館経済部一等書記官
増島 稔 内閣府政策統括官、埼玉大学客員教授
安井洋輔 株式会社日本総合研究所調査部主任研究員
福田洋介 農林水産省国際部国際経済課国際専門官

著者について

安達 誠司
エコノミスト、丸三証券経済調査部長
1965年生まれ。東京大学経済学部卒業。大和総研、ドイツ証券等を経て現職。『脱デフレの歴史分析』で第1回河上肇賞、『恐慌脱出』で第1回政策分析ネットワーク賞受賞。

飯田 泰之
明治大学政治経済学部准教授。
1975年生まれ。2003年東京大学大学院経済学研究科博士家庭単位取得退学。駒澤大学経済学部専任講師・准教授を経て、現職。

(概要、論旨)

    デフレと戦う金融政策の有効性.pdf



(以前の掲載論文)抜粋

http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je13/pdf/p01021_1.pdf

 



(参考図書)

「政策レジューム」転換でたどる近代日本
脱デフレの歴史分析  安達誠司 著   藤原書店

近代日本の政策思想の変遷



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    明治維新から1940年の、いわゆる戦時体制が確立されるまでの70年を近代日本と定義した場合、政策レジュームの転換が要請された局面は、都合、3回あったと考えられる。

 最初の局面は、1881年の「明治14年の政変」による大隈財政から松方財政への移行であり、

 第二の局面は、1920年代における「金解禁論争」から1930年の金解禁断行、昭和恐慌を経て、1931年の高橋財政に至るまでの政策転換過程であり、

 第三の局面は、1936年の二・二六事件をきっかけに、積極的な大陸進出を目指す「大東亜共栄圏」構想が実現に向けて動き始めた局面であった。

 この三つの局面での政策レジューム間の競争プロセスについての考察。

 なお、第二の局面での「金解禁論争」に代表されるように、実際のレジューム間競争「場」として極めて重要な役割を果たすのが「通貨システム」の選択についての政策論争であった。

 主に国内経済の成長戦略、及び、その背景となる政策思想をめぐるレジューム間競争について考察である。






「政策レジューム」転換の必要性


政策レジュームの転換.pdf

 




(既刊書)
円高の正体 安達誠司 著 光文社新書

 円高は、日本の貿易収支の赤字化を促進します。
 日本の貿易黒字は、円安が起こると増え、円高が起こると減るのです。
 そして、、為替レートが円高になるたびに、つまり日本の製品が円高によって負けるたびに、日本の景気(=名目GDP)は低下しているという事実があります。
 さらに円高は、日本のGDPを減少させる効果を通じ、税収を減らしています。
 景気が悪くなれば、消費者は買い控えをするので消費税の税収が減るし、国民の所得が下がることで、所得税の税収も減ります。
 企業の所得が減れば、法人税の税収も減るのです。
 円高は、名目GDPを減少させる効果をもって、日本全体の税収を減らし、ひいては、日本の財政赤字の大きな原因の一つになっている。



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