図書館の日本文化史

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図書館の日本文化史   高山正也 著  ちくま新書

図書館の日本文化史 

図書館について論ずるにあたり、図書館の内部の諸問題だけでなく図書出版・印刷はもとよりコンテンツとしての文学をはじめとする諸学術・芸術分野、その本や庇護にした人物などを幅広く視野に収める必要があると考えた

それらの歴史の累積が現代の文化に凝集、集積しているとの観点から、各時代の記述を等分には使わず、文字の年代から江戸出版業の確立までの歴史(古代から近世)を、第一章から第3章にまとめた

日本人は漢字という、日本文化とは全く異質な漢文化の表記文字である漢字を移入し、この漢字を利用することで日本文化を守り、使いやすくするため悪戦苦闘し、漢字の利用の仕方、読み方、判読の仕方のみならず、そこからまったく異質な仮名文字を生み出し、日本文化の初期化を日本文化に適切な形で完成させるという偉業を達成した

その結果、平安時代に国風文化が豪華絢爛に咲き誇る

後半部分では、幕末から20世紀の終わりまでを第四章、第五章にまとめ、第六章では、デジタル化に伴う技術革新により変化するだろう情報環境に影響される図書館の課題の若干についてまとめた

特に、第四章は、鎖国体制の中で帝国主義的な体制をとる西欧列強諸国に対し、立ち遅れた日本がどのようにそれら列強に短時間に追いつくことができたのか、という疑問への答えとなっている

その理由は残念ながら図書館が有効に機能したからではなく、江戸幕藩体制下での教育の高度な発展にあり、これが短い時間で西洋列強諸国に追いつくことを可能にしたと思われる

その後、満州国における権益をめぐる争いに端を発して日米の関係が悪化し、太平洋戦争が始まる

戦後、米軍の日本占領統治が始まり、米軍は日本を自由民主主義化するべく公共図書館の強化育成を試みたが、これは失敗する

しかし、日本図書館学校が設立され、国際水準での図書館専門職が育成されることにより、デジタル化時代において、情報管理体制の基盤を築くことが可能となった

また新書という形態の書幅の関係上、必要と思いながらも言及できなかったテーマも少なくないし、書き落としている課題もあろう。それでも一通り筆者なりの図書館についての総括したものである




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このページは、blogskawano.netが2022年11月 6日 09:49に書いたブログ記事です。

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