ChatGPT
検索から生成へ (ネットで検索しました)
( 検索結果をまとめてみました)
生成系AI開発において特に脚光を浴びる企業が「オープンAI」である。
イーロン・マスク氏をはじめとする著名IT企業家の投資を受けて2015年に非営利団体として創設された同社は、その後営利部門を設立し、対話型生成系AI「ChatGPT(チャットGPT)」を昨年11月に発表した。
チャットGPTは文章で質問すれば、情報を整理して伝えるばかりか、翻訳や小説のプロット作成、英会話の相手やプログラムコードの作成なども行い、高精度かつ汎用(はんよう)性が高いことに関心が寄せられた。
現在は登録すれば無料で利用できることから、発表後2カ月で1億ユーザーを達成。人気SNSの「TikTok(ティックトック)」が1億ユーザーまで9カ月かかったことと比較しても、その影響力の高さがうかがい知れる。
対話型生成系AIはさらに、インターネットで常識となった「検索」に大きな影響を与えると予測されている。
検索はユーザーが自らサイトをめぐり情報を整理するが、対話型生成系AIは質問を記入するだけで、AIが秘書のように欲しい情報をまとめて、わかりやすく伝える。
将来的には、ユーザーの年齢などによって表現を変えたり、AIとの対話から新たな興味を提案したりするなど、個人に最適化された情報提供サービスになると考えられる。
一方、収入の多くを検索に頼るグーグルにとって、対話型生成系AIは屋台骨を揺るがす存在である。オープンAIに早くから投資を行うマイクロソフトは今月、同社の検索エンジン「Bing(ビング)」に、チャットGPTの改良版となる対話型生成系AIを搭載すると発表。
現時点では一部ユーザーのみプレビュー版の利用が可能だが、チャットGPTより高性能との評価もある。
危機感を抱くグーグルもこれに対抗し、同様の対話型生成系AI「Bard(バード)」を近く公開すると発表。生成サービスによる収入源の確保は今後の課題だが、「検索」から「生成」への流れの中、各社が開発を競い合っている。
とはいえ、課題も多く指摘されている。グーグルやマイクロソフトが発表会で行った対話型生成系AIのデモンストレーションでは、AIの回答に間違いが指摘されている。
企業もAIは完璧ではないとただし書きをつけるが、記述の正確性の問題に加え、詐欺やフェイクニュースなどへの利用が懸念される。
さらに米スタンフォード大学の調査では、リポート試験にチャットGPTを利用した学生が17%いたことが判明しており、同大学はチャットAIが生成した文章の検出ツールを開発。オープンAIも同様の検出ツールを開発するが、その精度はいずれも発展途上の段階だ。
コロンビアでは、裁判官が判決の一部にチャットGPTを利用したことも問題となった。
期待と不安が入り交じる対話型生成系AIに対しては、精度向上に加え、犯罪流用を抑止する制度設計が企業側に求められる。同時に、知識の入手がますます簡便になる中、生成された文からヒントを読み取り、クリエーティブな作業につなげる私たちの知的態度の涵養(かんよう)も必要になるだろう。