blogskawano.net: 2024年12月アーカイブ

やや楽観的にすぎる歴史観だが読書の満足感は味わえるかも


著者について、

            グレーバー教授は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの人類学教授であり、負債論』や『ブルシット・ジョブ』などの著書のある研究者で2020年に亡くなっています。ウェングロウ教授は、ロンドン大学の考古学研究所に所属していて、比較考古学がご専門です。
 本書の英語の原題は The Dawn of Everything であり、2021年の出版です。邦訳タイトルは、ほぼほぼ直訳です。
 本書は文字記録の始まる前の先史時代、すなわち有史以前の人類史を捉え直そうとする試みです。

    ですので、歴史学者ハラリによる『サピエンス全史』、進化心理学者ピンカーの『暴力の人類史』、また、進化生物学者ダイアモンド教授の一連の著作などと同じ試みといえます。もっと大昔でいえば、エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』とも相通ずるものがありそうです。ゴーギャンの名画 1D'où venons-nous? Que sommes-nous? Où allons-nous? = 我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか とよく似た問いに対する回答を試みています。


 上下2段組で解説や参考文献まで含めて700ページ近いボリュームであり、すべてを的確に理解できたかどうかは自信ありませんが、それなりのインパクトある読書になることは確かです。

    ただ、有史以前からの人類史とはいえ、歴史的なモデルは置かれています。近代的な経済社会においては、国家が成立して議会・政府・裁判所が三権分立し、国内治安を維持するための警察、対外的な安全保障のための軍隊などを備え、基本的人権などの前に所有権などの制度的な諸権利が確立するわけです。その前の状態をホッブズとルソーの2つの自然状態に関する人類観とでも呼ぶべきモデルを示します。すなわち、ホッブズは、人々は孤独で貧しく辛く残忍で短い、という、いわゆる「万人の万人に対する闘争」と考える自然状態のモデルを提示し、人類とは凶暴で争い好きな存在として描き出します。
 逆に、ルソーは、農業と冶金の勃興を機に土地が分割されて私的に所有され、しかも、貴金属の蓄積と支配隷属関係が始まってしまうんですが、その前の段階では、豊かな実りを採集できる森で小さな集団にしか属さなかった野生人は、欲望を競わず平等かつ平穏に暮らしていた、という自然状態のモデルを示し、人類とは自由で平等な無邪気な存在であるとします。
 その上で、ホッブズ的にいえば、社会契約によって人類の本能を権力サイドから抑圧することとなり、ルソー的にいえば、本来の自由を犠牲にしていろんな制約に服することになります。
 そして、本書の重要な観点は格差とか不平等という経済的な見方です。すなわち、先史時代には原始共産制のような平等な経済社会であったにもかかわらず、文明の発達が不平等に道を開いた、というのが『サピエンス全史』なんかで見られる歴史観だと思うのですが、そこに本書は大きな疑問を呈しています。
 現在では例外的な紛争地帯などを別にすれば大きな移動は見られませんが、今の移民どころではない大規模な人口移動が先史時代から有史時代でも大昔にはいっぱいあったわけで、地域選択も自由だったようです。したがって、足による移動で豊かさを追求していた可能性が示唆されています。
 こういった基本的人権のもっとも基礎をなす自由と平等の観点から壮大な人類史の構築を試みた歴史書です。書店や図書館で目にするだけでボリュームに圧倒されて手に取ろうという気が起こらないかもしれませんし、手に取って読んでみてもなかなか理解がはかどらないかもしれませんが、時間をかけてでも挑戦する値打ちのある歴史書といえます。

    多分、解説については、ChatGPTに御厄介になるでしょう。

万物の黎明.pdf

       IMG_0935-thumb-350x233-304.jpg
世界史とは何か③


        「世界史の学び方」

           スケール表記で.pdf
           

歴史像を伝える②


       「歴史像を伝える」     


世界史の考え方①


          「世界史の考え方」

           世界史の考え方.pdf


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生成AIで世界はこう変わる  今井翔太 著


https://youtu.be/dDNLPuyBGdA?si=R4V03lz4uQsGdjsr


前代未聞の生成AI技術の台頭により、私たちの世界は大きな転換期を迎えています

 

本書、東京大学 大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 松尾研究室 に所属今井翔太さんの『生成AIで世界はこう変わる』は、この革命的技術の基礎と社会への影響を解き明かし、読者に新時代への備えを促します

 

目次

 

  1. ▪︎生成AI技術の出現がもたらす社会的、職業的影響について
  2. ①生成AI革命という歴史の転換点
  3. AIによって消える仕事、残る仕事
  4. AIが問い直す創造性の価値
  5. まとめ『人間ならではの感性と創造性の価値が重要視される』

 

▪︎生成AI技術の出現がもたらす社会的、職業的影響について

 

①生成AI革命という歴史の転換点

生成AIとは、文章、画像、音声などを新たに生み出すAI技術です

 

深層学習によりビッグデータから本質を学び、創造的な出力を可能にします

 

代表例のチャットGPTは、優れた言語処理能力と知識を備え、人間を上回る総合的知能を発揮

 

司法試験やプログラミングテストをパスする域に達しています

 

この急速な生成AI進化は、過去の産業革命やインターネットに匹敵する歴史的大転換と言えます

 

たった1年余りの間に、テック企業の事業構造をすら脅かすまでに至りました

 

 

②AIによって消える仕事、残る仕事

従来は単純作業ほどAIに置き換わりやすいと考えられてきました

 

しかし生成AIは、高度専門職にも大きな影響を及ぼすことが分かってきました

 

研究では全職業の約47%AIの影響下にあり、エンジニアやデザイナーなど知的創造労働の代替化が危惧されています

 

一方で、現場の肉体労働のように人間ならではの動作を要する単純作業は、AIにとって最も代替が困難な分野かもしれません

 

モラベックのパラドックスが示す通り、人には意外と簡単にできることがAIには難しいのです

 

 

③AIが問い直す創造性の価値
生成AIは既存のアイデアを組み合わせる創造性と、規則に基づき新しいものを探索する創造性は備えています

 

しかし、既存の概念から完全に離れた革新的創造性に関しては、まだ人間の域を超えられていないかもしれません

 

なぜなら創造には、個人の感情や人生が映し出された独自のストーリー性が重要だからです

 

AIの生成物には計算上のばらつきはあれど、人間ならではの想像力は乏しいのが実情です

 

つまり、人の心の機微を反映した創造的所産こそが、本当の価値ある芸術やアイデアなのかもしれません

 

生成AI革命の渦中にあって、AIに置き換えられるのは単に単純作業だけでなく、知的労働の多くも含まれる可能性があります

 

しかし同時に、生成AIには及び得ない人間ならではの感性と創造性の価値が、より一層高まっていくことでしょう


生成AI技術の急速な進化は、私たちの世界に大きな転換をもたらしています


本書「生成AIで世界はこう変わる」は、この革命的な技術の基礎と社会への影響を解き明かしています


従来の常識を覆す形で、単純作業だけでなく知的労働までもがAIに代替される可能性があることが分かりました


しかし同時に、人間ならではの感性と創造性の価値が一層重要視されることでしょう


この新時代において、私たち人間は何を軸に生きていけばよいのか、ぜひこの本を手がかりに考えてみてください

いま、ふたたび自分の存在を問い直すときがきた

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 14歳の少女ソフィーのもとに見知らぬ人物から届いた手紙。そこにはたった1行「あなたはだれ?」とだけ書かれていた......。本書が発行された1995年、日本では阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件が相次いで発生し、人々は命の価値と自らの存在意義を模索した。

 そしていま、未曾有の災害が日本を襲った。

 「哲学」は私たちの生きる道を照らすためにある。

 世界50か国1500万人超が読んだ名作が、著者の新たなメッセージを加えて再登場!


グラフィック版.pdf ソフィーの世界

 ある日、少女ソフィーのもとに届いた差出人不明の1通の手紙。そこにはたったひとこと「あなたはだれ?」とだけ書かれていた。それは「哲学」への招待状だった。世界的ベストセラーの哲学ファンタジーがフランスの人気作家によるコミック、バンドデシネになってオールカラーで登場!

目次


上巻

1 あなたはだれ? 
2 神話と自然哲学者たち 
3 原子と運命 
4 アテナイとソクラテス 
5 プラトン 
6 アリストテレス 
7 ヘレニズム 
8 ふたつの文化 
9 聖アウグスティヌス、アヴェロエス、聖トマス・アクィナス 
10 ルネサンス 
11 バロック


下巻

12 デカルト
13 スピノザ
14 経験主義者たち
15 社会契約
16 啓蒙主義とカント
17 ロマン主義
18 マルクス
19 ダーウィン
20 フロイト
21 20世紀
22 ヒルデ
エピローグ


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